佳作 |
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○
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来 宮 *
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池に注ぐ陽光受けて石の上に押し合い圧し合い甲羅干す亀
緑濃き頂隠す霧立ちて足元確かめ下る山道 |
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評)
一首目、静の中の動を感じさせる作品。「押し合い圧し合い」という言葉が生きている。二首目、上句の把握に工夫が感じられて良い。 |
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○
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時雨紫 *
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眉きりりと笑み投げかける男振りその面影を口元に探す
杉形の茶の山掬う二杓に思いを込めて今日の茶点てる |
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評)
一首目、ユーモラスな内容だが家族への愛情もよく伝わってくる。二首目、茶道をよく知らない人にもその場面が伝わるような一首となった。 |
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○
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太等 美穂子
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こつこつとひと鍬五寸草取りて振り返りみれば作物(さくもの)凛と |
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評)
作者の堅実な仕事ぶりと、作物の成長に対する喜びがよく表れている。 |
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○
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夢 子 *
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太陽の背に来る席を選びたりなるべく皺の目立たぬように
風吹けば見える白髪の気になりて洒落た帽子を探して歩く |
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評)
いずれも自身の老いを正面から捉え、前向きに暮らしておられる様子がよく伝わってくる。 |
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○
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原 英洋
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涼しげに夜雨がさざめく部屋のなか滴り落ちるリズムを聴きをり
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評)
静かな部屋の中で雨のリズムを楽しむ作者の様子がよく伝わってくる。 |
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○
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ハナキリン *
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のれん越しに休まず動く腕見えて喜の家の蕎麦の一枚あがる
カウンター越しに並びし四つの丼(どんぶり)に揚がりし海老の尾の揃い立つ |
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評)
一首目、働く人の一瞬をよく捉えている。二首目、結句の表現に勢いがあり、魅力を感じる歌となった。
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○
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コーラルピンク *
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じゃがいもの皮剥きながらきくサルサ溢れるリズムにかの日のハバナへ |
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評)
作者の日常の一コマがよく表されており、読んで楽しい気分にさせられる。 |
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○
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紅 葉 *
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運動に疲れた体をひっそりと休めておりぬ平和な国に |
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評)
平和のありがたさをかみしめている様子が詠まれている。「共謀罪通過」の複雑な思いも込められているだろうか。 |
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○
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まなみ *
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人気なき退蔵院の石庭は線と円との調和の空間 |
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評)
退蔵院の石庭の様子を、下句の丁寧な表現により表すことに成功している。 |
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○
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金子 武次郎 *
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こぶしほどの蕾たちまち開きけり白木蓮は香りも高く
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評)
白木蓮の開花の様子がよく表れた、気品を感じさせる一首。 |
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○
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仲本 宏子 *
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人生を日舞に生きし友の背は静かな内に貫禄を秘む |
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評)
一芸に秀でた人の背中が語りかけるものを捉え、的確に表現することができた。 |
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○
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鈴木 栄一 *
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木道の陰にて見つけし座禅草たった一株雪残る中に |
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評)
大自然の中で出会った、一株の座禅草。客観的な描写の中に、作者の喜びを感じ取ることができる。 |
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○
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かすみ *
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天気雨日向ぼっこの小蛇いて何を思うや太陽見上ぐ |
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評)
自然の中の何気ない一コマを捉え、ほのぼのとした魅力を備えた一首とすることができた。 |
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