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(2020年9月) < *印 新仮名遣い > |
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米安 幸子(HP運営委員)
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秀作 |
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○
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文 雄 *
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しんどさをみせねばわれが元気だと思いて妻ははしゃぎていたり なりゆきに任すとおもえば楽にして生きん生きんと思えば苦し 九十三まで生きたからもういいと思えば少し楽になりたり |
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評)
思うところを率直に平明に、調べに乗せてうたわれた九月の歌は、そのまま夫人への愛のエールではないでしょうか。ご夫妻のご長命を心からお祝い申し上げます。 |
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○
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は な * |
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病窓に一つ一つと灯の増して探していたり我が家の明かり 炎天を突き上げるごとき花房の百日紅見つつ階段登る |
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評)
視点の定まらない初稿に、ポイントを絞ることを提案しました。すると、丁寧な写生に始まり、言外からは入院中の作者の様子も窺えるような、期待以上の歌に仕上がりました。このまま「新アララギ」に紹介したいと思う程です。 |
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○
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夢 子 * |
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静かなる愛に安らぎうとうととまどろむ君を揺さぶり起こす 「もう一度愛して」と言う花言葉その黄水仙のブーケを君に |
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評)
君なるお方は、現在ターミナルケアの患者さんかも知れないと思って鑑賞しました。深読みでしたらお許しください。一首目には、作者の叫びにも近い詠嘆が籠められ、二首目にも、人の世の何とも言えない哀愁がにじみ出ています。 |
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○
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清水 織恵 *
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逝く夏を惜しみてレモンイエローのペディキュアを塗るわが夏のいろ なにもかも捨て去るように走る我にトンボだけが近寄りてくる |
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評)
只今のこの欄では最も若い作者だと思います。二首ともセンスのある読みぶりに注目しました。詠いたいことがある今こそ、思いっきりうたってください。期待しています。 |
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○
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鈴木 英一 *
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風捕らえ高く上がりて急降下飛燕の早わざサーファーのごとし |
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評)
情景の切り取りが上手く、直喩法も成功して動きのある爽快な作品となりました。 |
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○
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山水 文絵 *
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幼き日竿継ぎ足して蝉採りきいま目の先に啼くをかなしむ すっぴんにマスクが習いの我なれど今朝は化粧すZOOMの日なり |
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評)
<竿継ぎ足して>という具体が良い。長じて今は、目の高さに聞く蝉の声。その一途さをかなしむ作者である。二首目は、コロナ禍を女性の視線からユーモラスに詠って、特色があります。 |
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○
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亀田 鶴男
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前橋より二時間かけて通ひゐし友がときをり見せたる笑顔 川沿ひの道を分かれて湯治場へ祖母を運びし父のトラック 利根川に架かる鉄橋の下を抜け海へと続く長き土手道 |
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評) 回想詠ながら読者をも引き込む写生力だと思います。惜しむらくは、体言止が並ぶと平板な印象がのこるように感じます。 |
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佳作
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○
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紅 葉 *
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並ばぬと席に座れぬ東京が戻ってきたりマスクをつける 質問に答えるうちに少しずつうつつに戻る仕事をしよう |
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評)
GoToという簡略な言葉が否応なく定着した昨今です。この歌は、第一次の自粛規制が緩められたころでしょうか。東京行きの朝のホームに並び、引き締まった気持をさらっと歌って成功しています。続く歌にもスタートの気分が読み取れます。 |
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○
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ハワイアロハ *
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一手ごと評価値の動く局面に藤井二冠は長考に沈む プロ棋士の駒組み真似れど次々にわが駒取られぬ将棋ゲームに |
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評)
期待の星藤井二冠に触発されて、将棋ゲームに本気で取り組む行動力は、この後の歌の幅をも広げるでしょう。 |
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○
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黒川 泰雄 * |
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犬だけがわが掛け声に寄りてくるもの言えぬ汝が唯一の友 夕闇に聞く蝉時雨我が傍に腹這う犬も耳そばだてて |
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評)
老犬に近い犬との生活を、愛情過多に陥ることなく詠われていて味があると思います。 |
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○
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原田 好美 *
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ジャガイモをストロン(塊茎)と学ぶ生徒らは掘りたるイモを「ストロン」と上ぐ 原爆の無惨伝える資料館訪ね戻りて生徒に語る |
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評) 適応指導教室の生徒達との交流を、生き生きと詠まれていて特色がある。原爆資料館のことは、折に触れて繰り返し生徒さんに話してあげてください。 |
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○
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はずき *
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九年ぶり日本の技術が認められスパコン「富岳」は世界四冠 明日にもコロナワクチン開発へ進めスパコン世界に羽ばたけ |
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評)
スーパーコンピューターの完成は、我々日本人には久々に明るい話題でしたね。 |
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○
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時雨紫 *
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園児にも遠隔授業の始まりて幼は午後のみ五歳児になる |
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評) コロナ禍は園児の生活にも大きく影響が及びました。お孫さんを、五歳児らしくのびのびさせてあげようとの作者の心遣いに共感します。 |
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○
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菫 *
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虹雨花の散りくるパティオに隣人と再封鎖嘆く共にマスクして 朝な夕なアボカドの苗に水やりてたわわに実る大樹夢見る |
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評)
南国ハワイの特色ある花木を詠まれた。コロナ禍の心配の無くなる日の、早く来ることをを祈りましょう。 |
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○
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鈴木 淡景 |
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小春日の穏しき庭に佇みて犬と戯れし遠き日偲ぶ 去年の暮独り旅せし大和路をわが折節に詠まんと思う |
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評) 二首とも一通り破綻なく詠まれています。もし他人の作として読んでみると、何処に感動されますか。工夫の余地があるかもしれません。 |
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○
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大村 繁樹
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つくつく法師頻りに鳴けば汗にまみれ働きしわが夏も過ぎむか |
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評)
暑さの所為でしょうか、作者にしてはもの足りなさが残りました。 |
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○
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くるまえび
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長年のうなぎ池での研究に熱中したる学生時代 |
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評)
今月は「乞う!次なるステージ」で終わってしまい残念でした。「ハワイには棲んではいない「うなぎ」なれど家族で食べる土用丑の日」が一番でした。 |
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寸言 |
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「自作の良し悪し」は、中々わかり難いものです。思い入れが強ければなおさらでしょう。経験を述べた(語った)だけでは、読者の共感を得にくいのが短歌です。訴えたい嘆きを読者と共感しあうのが 短歌だと思います。
「一人ぐらいは、共感してもらえるかな?」という意識を何処かに置いておくと良いかも知れません。媚びは以ての外ですが。 米安 幸子(HP運営委員) |
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