短歌雑記帳

アララギ作品評

 2013年2月号選歌後記    三宅 奈緒子

白き蝶一つあはあはと翔び行けりなれはこの世にひとり生くるか
ゆりの木の今年の花の下行けば共に見し友面影に顕つ
                     北川  眞

 蝶、ゆりの木の花、題材として特別のものではないが、それぞれの作品の中にしっくりはまって一つの味わいを出している。対象を活かす句法、それはどういうところにあるのだろうか。

思ひがけず剣道大会の放映見ぬ息つめ夢中なりし亡き夫思ふ
マテバシイの並木も見えず窓に額を付けて流るる霧を見てをり
                     小祝 幸栄

 剣道大会の映像で亡夫を偲ぶ作品もいかにも自然でよいが、後半の霧の歌も展開が中々にロマンティックで惹かれた。

ゆるやかに時ながれゆき四万十川光る水面を船すべりゆく
川底に小さき魚見ゆ透き通るこの清流に棲む魚はなに
                     金野 久子

 四万十川の流れに沿っての旅行詠。歌調がゆるやかでこの対象を詠むにふさわしく、内容にそれなりの展開があって読ませる作品。



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