短歌雑記帳

アララギ作品評

 2014年7月号 選歌後記    三宅 奈緒子

つひの日々共に過ごさむ我らかと思へばホームの誰も親しよ
「最後かも」心もとなきわが友と琵琶湖のさくら見むと企つ
                    近藤 淑子

 二首ともさりげなく詠い出されているが、その奥に苦しくつらい心が秘められている。第一首の陰影が後出の作品にも及んで、一連を生かしている。

いつまでも明るさ保つ濠の水桜の花びらかず知れず浮く
風立ちて桜吹雪に散る花を浮べて濠は昏れなむとする
                    大矢 稚子

 簡潔に詠われた叙景歌と見えるが、何か作者の哀感が底にこもって深い味わいがある。

雨の降る枯れ色混じる芝原に鶫は今朝もただ一羽来る
竹群の黄に静まれる麓より山腹かけて盛り上がる若葉
                    小島  正

 静かな自然鑑賞の一連で、特別の発見というのでなく、愛する自然を静かに鑑賞している作者を感じ、共感させられる。



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