短歌雑記帳

アララギ作品評

 2014年9月号 選歌後記    三宅 奈緒子

バンランの花咲き盛るハノイの街奔流のごとバイク群れ行く
天秤棒かつぎ来りて物を売る木陰に街の埃吹きゆく
                    金野 久子

 一連いかにも生き生きとして「街の埃」が読む者に吹きつけて来るようだ。新しい政治体制になった活気をそのまま伝えて、作者の感覚の冴えを感じる。

結氷せし氷上に人ら群れをりしも幻かいま流れゆく春のオビ川
人は言はずされどわが知る軍用機製作工場川向うにあり
                    千葉 裕子

 現実に一生活者として暮らしている作者の眼を通して触れたロシアの姿の描写に新鮮さを月々感じさせられる。作者に今後一層の活躍を祈る。



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