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○ |
甲 府 |
青木 道枝 * |
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遠き日の記憶のどこかに通うもの夕五時町にチャイムながるる
漢字の筆順など今も戸惑いてどんな小学生だったのか私(わたし) |
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○ |
札 幌 |
内田 弘 * |
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垂直なビルの窓を流れつつポプラの絮は舗道に積まれる
我を捜し南五条を行く時にススキノが一気に生き返りたり |
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○ |
横 浜 |
大窪 和子 |
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工場内の解体を指示する汝の声強ければ恃む心しづめて
わが前に突然汝の開きたるメキシコの市(まち)アグアスカリエンテス |
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○ |
那須塩原 |
小田 利文 |
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カーテンを取り払ひたる夜の部屋に己一人の咳聞きゐたり
今朝もまた心臓跳ねて脳疼く五十八歳となりたる吾の |
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○ |
東広島 |
米安 幸子 |
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人気なき夏の桑畑にたらちねの母は気づかふ戦場の子を
戦後七十年長き短きそれぞれの思ひ有耶無耶に夏がまた来る |
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○ |
島 田 |
八木 康子 |
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馬鈴薯のこの一畝(うね)は八木家用五月のうちに掘れよと友は
たまらなく会ひたくなる人苦手な人歌誌読み継ぎて出会ふ時々 |
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○ |
名 護 |
今野 英山(アシスタント) |
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いつよりか珊瑚の海の垣にからみたり乾びし棘もつ外来植物
ガイドする女(をみな)はやはり大阪生れ次から次へと淀むことなく |
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