第二次世界大戦勃発のころ、リトアニア領事であった杉原千畝。6000人のユダヤ難民を救ったことで有名である。その夫人、杉原幸子は歌人で、短歌との出会いはアララギであったという。今、彼女の歌集『白夜』が手元にある。
『白夜』 「命のビザ」 より
固き独逸語にて公園の柵に記しありユダヤ人入るを禁ず
ナチスに追われ逃れ来しユダヤ難民の幾百の眼がわれを凝視むる
ビザを待つ人群に父親の手を握る幼子はいたく顔汚れをり
ビザ交付の決断に迷ひ眠れざる夫のベッドの軋むを聞けり
苦しみし二夜は明けぬ夫と我の命かけ救はむ心定まる
走り出づる列車の窓に縋りくる手に渡さるる命のビザは |