作品投稿

作品募集要項

短歌をお寄せ下さい。作品には運営委員による指導があります。以下の手順でお願いします。

(1)「初稿」の提出。1人1か月に5首まで。自作未発表作品であること
(2)「改稿」の提出。「掲示板」での添削等を取り入れた改作。この提出は月3回程度。
(3)毎月20日までに「最終稿」と明記して、1人3首まで(厳守)を、指導を受けた作品の中から自選して、あらためて提出
(4)ハンドルネームを使用してもよいが、混乱が生じやすいので頻繁に変えないこと。
(5)「新アララギ」本誌の会員は、ここに投稿した作品を本誌に二重投稿することのないように注意する。
(6) 投稿された作品は選抜の上、「新アララギ」誌上又はインターネット上のホームページに掲載される。掲載後は原則、削除や消去は不可である。


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今月の秀歌と選評



 (2025年3月) < *印 旧仮名遣い >

小松 昶(新アララギ HP運営委員)


 
秀作
 


原田 好美

脳血管手術に伴う片麻痺に涙を終いリハビリ始む
ふるさとに春呼ぶ祭りと伝われる「お椿さん」を幾年も想う


評)
前)車椅子生活を余儀なくされている作者だが、その過酷な運命を嘆き悲しむのみではなく、懸命に抗って前向きにひたすらに生きる姿に読者は勇気を与えられる。後)自由に移動できないために長年故郷に帰れていない作者なのだろう。下句に「ふるさと」への万感の思いが込められていていよう。
 


歌詠破調 *

疎ましき祭りの夢に昂ぶりて熱忌むごとく真夜に水飲む
遠花火眺むる港音はなし曳航さるる帆船ひとつ


評)
前)祭りが嫌いな少年、或る晩、祭りに熱狂する夢を見て火照ったのだ。何か詩的な感受性の強い魂を感じさせる歌だ。後)花火の音の聞こえない港に曳航されて帰ってきた帆船を目にした作者の感じた哀れ、寂しさ、悲しさ、、、は取りも直さず作者自身への思いなのだと感じられ、心に沁みる。
 


つくし

清掃より逃げる二人を帰すまじ彼らのカバンを我が肩に掛く
同級生に散々殴られ辞めるとは調べた末に分かった事実


評)
荒くれ生徒のいる工業高校の英語教師であった作者。前)生徒の矯正のためには体を張って奮闘する姿が尊い。後)このような事案が多いらしく、別の歌で、進級したのは半分の生徒に過ぎないと分かる。「担任は常に誰かを心配すそれが趣味だと思い込むまで」の歌もある程に責任感の強い熱血先生なのだ。
 


紅葉

陽の注ぐ窓に目をやる修論の入稿に来た金曜の昼
ページ数を今度ばかりは確認す製本用の印刷原稿


評)
二年間頑張ってようやく修士論文の原稿ができあがったのか。ページ数に関して齟齬があったのを直して、いよいよ印刷する段階なのであろう。その感慨、安堵感と充実感が感じ取られる。これまで、やや具体に乏しい印象であったが、今回はしっかり具体を効かし、それだけ読者の共感も大きくなっていよう。
 


夢子

何かしら大変なことを仕出かすかと心ざわめくトランプ政権
トランプ氏の顔にも飽きてチャンネルを回せばそこにも同じ顔がある


評)
前)大統領選のときから、アメリカ一国のみのエゴ的利益を最優先する言動が目立ったが、実際に実行しつつあるのには驚く。米国に暮らす作者はなおさらであろう。「心ときめく」でなく、「心ざわめく」が言い得ている。「仕出かすかと」の「と」はなくてもよいですね。後)どの局もトランプ氏の話題で持ち切りなのだ。彼とその政策に対しての客観的な視線、冷ややかな思いが滲み出ている。
 

佳作



はな

友の犬の鼾をラインで聞く今宵スーパームーンの春となりたり
桜木の捩れた幹に瘤あまた その生命力が花を育む


評)
前)上の句が当世風で楽しく面白い。そこへこの下の句の取り合わせの意外性に心ひかれた。後)決して美しくはない捩れた幹とあまたの瘤を、あの素敵な花を育む生命力と捉えたところがお手柄ですね。
 


鈴木 英一 *

新しきクラブで最初のプレーにてなんと二回もホールインワン
寒気さけ屋内やぬちに入れし君子蘭花芽やうやく葉の付け根に出づ


評)
前)借り物のクラブで練習を積んできて、ようやく自前のクラブを買った作者のグラウンドゴルフ大会での光景だ。ゴルフの才能がおありのようで、歓びと感嘆が素直に表われている。後)日当たりや温度管理が難しい君子蘭を大切に思う心が、上の句にも下の句にも表れていて魅力的だ。
 
 
寸言

 今回の皆様の短歌の出来具合は殆ど差がないと思う。秀作か佳作かは単に私の心に食い込んでくるその深さの差でしかないので、順位に拘る必要は全くありません。さて、このごろの世界情勢は何とも危なっかしい。数年前からのロシアによるウクライナ侵略、イスラエル・パレスチナ紛争、そして今回の歌にもあったが、トランプによる世界の困惑問題、その他に国内情勢、など毎日のニュースに心が痛むばかりである。吾々は「困ったなあ」とつぶやくばかりではなく、そういったことに対する自身の思い・行動などをしっかり歌い残す事も、未来を見据えると必要かもしれません。ご投稿を期待します。

          小松 昶(新アララギ HP運営委員)
 
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